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しっくいとは

しっくいとは、消石灰を主成分とする塗り壁材のことです。
しっくいは、空気中の炭酸ガスを取りこんで硬くなります。さらに、亀裂防止の為に麻スサ(麻の繊維)、塗り作業性を良くする為に糊(海草から抽出)を混ぜます。
その歴史は遥か五千年を遡り、エジプトのピラミッド、ローマの都、そして万里の長城を組積するときに使われてきたのもしっくいでした。
古代ギリシアの時代からローマ、ルネッサンス、そして近代ヨーロッパへ脈々と継承されてきたフレスコ絵画の伝統も、「しっくい」の材料と施工技術の結晶と言えます。
日本においても、寺院建築や城郭、民家の蔵など、古来より使用されています。
我が国の伝統的な木造建築における「しっくい」と木材・日本瓦との調和は、日本の建築美の象徴ともいえます。さらに、機能面においても、我が国の気候風土に適した調湿性を備えているとともに、耐火性・耐久性・意匠性にも優れています。

しっくいがかたまるわけ

基本的には主成分である消石灰と空気中の炭酸ガス(CO2)が反応し、炭酸カルシウムを生成して硬化(炭酸化)します。 以下に示すのは、理想的な条件下での炭酸化試験デモで、左が炭酸化前、右が炭酸化後の走査型電子顕微鏡写真です。 左の写真からはおよそ2μm径の板状消石灰粒子が認められ、炭酸化後の右の写真からは消石灰粒子表面に析出する炭酸カルシウムが確認できます。 「しっくい」は炭酸化により析出した炭酸カルシウムが粒子同士を結びつけ固まります。

栃木県葛生地区周辺の石灰・ドロマイト鉱床は、今から2億5000万年前のサンゴ虫類や紡錘虫(フズリナ)類などの海棲生物の堆積物で、生物を起源とするものです。 推定埋蔵量は15億トンにもおよび、葛生地区の特産鉱物となっています。

採掘した石灰石は粉砕機で適切な大きさに調整してから、焼成炉でおよそ1000℃の高温で焼成します。建築材(左官材)として使用される石灰は、少量の岩塩とともに焼成します。

焼成により、石灰石は熱分解を起こし、炭酸ガスを放出して生石灰(酸化カルシウム[CaO]を主成分とし、キセッカイ、セイセッカイと呼ぶ)が得られます [式1] 。焼成前の石灰石と比べ、軽くなり、白色化しています。

生石灰に水を作用させると、消石灰(水酸化カルシウム[Ca(OH)2]を主成分とする)が得られます [式2] 。 消石灰を得るには2通りあり、少量の水を作用させ、消石灰の粉末を得る方法(乾式消化)と、多量の水を作用させ、クリーム状の"生石灰クリーム"を得る方法(湿式消化)があります。 消石灰が「しっくい」の原料となります。 消石灰は、身近なところではグランドでのライン引き、最近では鳥インフルエンザの防疫・消毒、伝染病防止として使われたことで知られています。

このようにして得られた消石灰に糊や繊維(主に植物性)などを加えたものが「しっくい」で、水を加えてよく練って、コテなどで塗り付けます。 「しっくい」は気硬性といって、空気中の炭酸ガス[CO2]をゆっくり取り込みながら硬化し、もとの石灰石成分(炭酸カルシウム)へと戻って行きます[式3]

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